恥ずかしながら初めて乳児ボツリヌス症というのを知ったので調べてみました。

はちみつが原因で生後6ヵ月の赤ちゃんが死んでしまうという痛ましい事故がニュースで取り上げられていました。

東京都は7日、ハチミツを与えられたことが原因で乳児ボツリヌス症になった足立区の生後6カ月の男児が死亡したと発表した。男児の家族が約1カ月間にわたってハチミツが入った離乳食を食べさせていたという。

 都によると、統計が残る1986年以降、乳児ボツリヌス症による死亡例は全国で初めて。

乳児ボツリヌス症で初の死亡例 ハチミツ与える(2017年4月7日 日本経済新聞)

恥ずかしながら、僕自身乳児ボツリヌス症という病気を知りませんでしたし、はちみつが病気の原因となることも知りませんでした。幸い、うちでは妻が赤ちゃんが摂取していい食べ物かどうかに対してアンテナを強く張ってくれているので、新しい食べ物をあげるときにはいつも妻に聞くようにしていること、僕自身これまではちみつをあげようと考えてこなかったので、問題はなかったようです。

この機会に、乳児ボツリヌス症について少し調べてみました。特に参考になったのは、国立感染症研究所のサイト、および小児科医である岡本光宏氏のブログ「笑顔が好き」でした。

乳児ボツリヌス症とは(国立感染症研究所)

乳児ボツリヌス症による初めての死亡報告で考えるべきこと。(笑顔が好き)

多くの乳児ボツリヌス症は蜂蜜と無関係。寄与リスク0.0225%。(笑顔が好き)

乳児ボツリヌス症の症状

便秘や脱力状態(全身の筋力の低下)、筋力低下による哺乳力の低下、さらに首が支えられなくなるといった症状がみられるようです。ただ、これらの症状は胃腸炎でも見られることがあり、診断は非常に難しいようです。

乳児ボツリヌス症の原因

ボツリヌス菌の芽胞を摂取したことで、まだ腸内細菌叢(さいきんそう)が未熟な乳児においては腸管内でボツリヌス菌芽胞が発芽・増殖して毒素を出し、発症するようです。大人は腸内細菌叢が発達しているため、ボツリヌス菌芽胞が発芽することは基本的にないようです。

なお、この芽胞は熱に強く、火を通しても死なないようです。

乳児ボツリヌス症の予防

芽胞による汚染の可能性がある食材(はちみつ、コーンシロップ、野菜ジュースなど)を割けることが唯一の方法だそうです。ただ、岡本氏の記事によると、土やほこりの中にも芽胞は存在することや、母乳栄養がリスク因子にもなるとのことですので、完全な予防は難しいと思われます。

乳児ボツリヌス症から考えたい、「正しく怖がる」ということ

岡本氏のブログでも紹介されている、1989年に発表されたアメリカの論文では、68例の症例を調査した結果、はちみつが乳児ボツリヌス症発症に寄与するとのことですが、症例数は11例と約16%にとどまるようでした。一方で、コーンシロップや母乳栄養の摂取や農村・農地での居住も、はちみつほどではありませんが乳児ボツリヌス症発症のリスク因子になる

との結果が得られたようです。先ほどあげたように土やほこりの中に芽胞が存在することから、農村や農地での居住がリスク因子になったと考えられます。

今回の事故では「はちみつで赤ちゃんが死んだ」ということがクローズアップされてしまっていますが、論文を見る限り症例の割合としては決して高くないと個人的には思います(もちろん、痛ましい出来事であることは間違いないです)。もし、これまでに1歳未満の赤ちゃんにはちみつをあげてしまったパパママも、「なんてことしてしまったんだ…」と悲観しすぎるのではなく、「よかった、次からは気をつけよう」ということでよいと思います。ただ、はちみつが他に比べてリスクの高いものであることに変わりはないことや、リスクを負ってまではちみつを1歳未満の赤ちゃんにあげたい理由ももないので、原則避けたほうがよさそうです。

一方、母乳栄養もリスク因子のようですが、母乳には免疫やスキンシップなど、赤ちゃんにとってのメリットが多くあります。リスクと言っても出生数に対する症例数は非常に少なく、メリットと天秤にかけて考えても、母乳栄養を選択するほうが合理的だと思います。

「完全な安全」など、この世には存在しません。交通事故の危険性があるからと言って、外に全く出ないわけにはいきません(もし全く外出しないと、食料が得られず餓死する危険性が高まります)。リスクを負ってでも、得られるものが多岐にわたる以上、外出するというのが合理的な考えです。やみくもに「はちみつ食べたらやばいらしい」「母乳にもリスクが有るらしい」と怖がるのではなく、どの程度のリスクかを考えて判断し、ただしく怖がりたいものです。

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